グルジアのGW 第三夜

こちらの文章は2016年にnote上で連載したエッセイグルジア酔いどれ夜話の再録です。現在の私の考えと異なることや勘違いもありますが面倒臭いので記録の保存という観点から内容を変えずに再録しています。

第三夜
2016/05/10

2015年4月に呼称をグルジアからジョージアへと変更した、南コーカサスの国。日本ではあまり馴染みのないこのジョージアへ、シルクロード旅行中にたどりついたSiontakさんのコラムです。ジョージアとはいったいどんな国で、どんな生活をしているのか!?

日本のGW、正式名称「黄金週間」、日本の大型連休を代表する素晴らしい一週間。グルジアに来る前も台湾や中国に住んでいた僕は毎年GW期間中、日本の友人がUPする写真やツイートをオフィスのPCからながめてはちょっとした羨望と疎外感を持っていたのだが、今年はちがう。

グルジアにも同じ時期にGWがあったのだ。4/29~5/3と5連休。長い人はもっと休むらしい。日本のGWとも時期が重なってるのでなんだかうれしい。

グルジアのこの連休、一体なにかというと、復活祭(イースター)の祭日である。グルジアの復活祭について友人の酒飲みトトに聞いてみたものの、ろくなことはわからなかったので、同僚のグルジア人に聞いてみた。

彼によれば、グルジア正教会の復活祭はカソリック、プロテスタントよりも一カ月ほど遅く、今年は4/29金曜日がキリストの磔にされた日で、5/1日曜日が復活の日でキリストの復活を祝う。

信仰の厚い人は金曜前後は断食したり、肉類を避けて喪に服し、日曜日にはご馳走をつくって盛大に食べ、かつ飲む。正教会においてはクリスマスよりも大事な祝祭日でキリストの死と復活という意味だけでなく、春の訪れと万物の再生と豊穣をも祝うのだそうだ。

翌日の月曜日は先祖のお墓参りに出かける習わしなのでこの連休中は帰省する者が多く、首都トビリシから人がいなくなるとも。日本でいうお盆休みにもちょっと似てるのかもしれない。

そういえば4月に入ってから町でも復活祭関連のいろんなものが売られてるのを見かけるようになった。


クリスマスリースとはまたちょっと違ったイースターリース。なんの木の枝かわからないけどリースになってない状態でも水に差した状態で売られていた。

復活祭といったらイースターエッグ。ロシアとかアルメニアのはカラフルで細かい模様が施されてるのを見るけどグルジアのはシンプルに濃い赤一色のものがほとんど。

この赤色はキリストの血一滴一滴をあらわしていて、キリストが磔にされた時流した血を浴びた処刑官の病気が治ったという奇跡にもとづいているとか。卵は生命の象徴。ちなみに一緒に写ってるくつ下はただの手あみくつ下で復活祭とは関係ない。

Jpeg

これはなんだろう?と思って隣に住む大家さんに写真を見せて聞いてみると、赤黒い粉みたいのが卵を赤く染める植物由来の染料で卵と一緒にゆでて色をつけるのに使う。

袋に入ってるのは脱穀してない小麦。この小麦をどうするのかというと…

大家さんちの小麦。発芽させて卵と一緒に家に供えるだそう。小麦の芽吹きも豊穣のシンボルなのか。猫草みたい。

いつも昼ご飯を食べるカフェや町のスーパーにもケーキが並びだした。この時期にだけ食べられる特別なケーキだという。

中身のつまった生地にレーズンが入っていて、シナモンとジンジャーのような風味がする。結構大きくてちょっと1人では食べきれない。

そういえばこのあいだ行ったニコ・ピロスマニのミュージアムにあった彼の絵にも復活祭を描いたものがあった。

昇天するキリストと復活祭の食卓。ワインと卵、円筒状のものがケーキ。白い三角錐のも菓子らしいけどグルジアではまだ見かけない。ケーキに書かれたX.Bはロシア語の復活祭祝いのあいさつ

「Христос воскрес!」
「 Воистину воскрес!」

の頭文字をとったもので

「キリストがよみがえったね!」
「本当によみがえったね!」

くらいの意味。グルジアではグルジア語でどう言うのかというと

「ქრისტე აღსდგა!(クリステ アグスドゥガ!)」
「ჭეშმარიტად!(チェシュマリタッド!)」

となる。意味は同じ。

この絵が描かれていた時はソ連時代なのでロシア語でX.Bと描いていたのかな。

ニコ・ピロスマニはグルジアを代表する酔いどれ画家。その人生はかなりドラマチックで、その絵は一見稚拙なようでいて見ているとなにか心に迫ってくるものがある。僕はグルジアに来てから知ったが大好きになった。ちょっとアンリ・ルソーにも似てる気がする。ピロスマニについてはまた今度。

去年もこの時期グルジアにいたのだけど、なにかのついでで墓地を通り抜けることがあった。お墓の周りには若草が茂り、日が射してるせいかしめっぽい感じはない。ちょうど復活祭の後だったのでお墓参りのグルジア人たちもいた。みんなハッピーな感じで墓に迷い込んだ外国人の僕らをいぶかしむこともなくあいさつしてくれた。

祝いの日にお墓参りをして故人に想いをはせる、というのもいいもんだと思った。お墓にはイースターエッグと花が供えられていた。

お墓の写真を撮るのもどうかと思ったが、その場のグルジア人たちはどんどん撮れと身振りで言うので何枚か撮ったもの。旧ソ連国に共通して、墓石には肖像が点刻されてることがある。故人のありし日のキメポーズ写真を元にしてるのか見ていて神妙になってしまうものより、思わず笑ってしまうものも多い。グルジアの墓地はたいてい日当たりと見晴らしいいところにあるのでまた来てもいいかな、と思わせるよさがある。

異教徒である僕だが去年の復活祭はトトの彼女の両親に招待してもらった。

レストランでは見られない家庭料理を「もっと食え、もっと食え」と満腹になるまで食べさせられ、また親戚の手作りワインでジャンジャン乾杯した。異国に1人で生活していたり旅行していたりする者にとって、家族の祝いの席に招待してもらえることはとても貴重でまたありがたいものだ。

その時酔っぱらって撮った写真がGIF動画にするとよく雰囲気が出てた。noteはGIF動画が投稿できないみたいなので、画像をクリックして別途UPしたGIF動画を見て欲しい。

今年もグルジアにとっていい復活祭が迎えられて朗らかにワインが飲めることを心待ちにしている。

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グルジア/ジョージアで観光ガイドをしています。お問い合わせはこちらから



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