トビリシ温泉 第十夜

こちらの文章は2016年にnote上で連載したエッセイグルジア酔いどれ夜話の再録です。現在の私の考えと異なることや勘違いもありますが面倒臭いので記録の保存という観点から内容を変えずに再録しています。

グルジア酔いどれ夜話
第十夜
2016/08/23

2015年4月に呼称をグルジアからジョージアへと変更した、南コーカサスの国。日本ではあまり馴染みのないこのジョージアへ、シルクロード旅行中にたどりついたSiontakさんのコラムです。ジョージアとはいったいどんな国で、どんな生活をしているのか!?

第2、4火曜日更新
<著者:Siontak>

早めに仕事が終わるとうれしい。が、時間が早いと外はまだ日差しが強い。午後6時なのに線路の上に陽炎が上っていた。

↑仕事場近くの操車場。グルジアでは踏切を見たことがない。

夏至を過ぎてからそろそろ2ヶ月経とうとしてるけどまだまだグルジアの日は長く、そして暑い。暑い夏が大好きで寒い冬が大嫌いな僕には合っている。

この10年ほど、僕は家でエアコンを使ったことがない。3年前まで住んでいた台北も夏は大変暑かった。日中はエアコンの効いたオフィスにいるので身体が冷えてしまう。家に帰るとムワッとした蒸し暑さの中で汗みずくになりながら台湾ビールを飲む。飲めば飲むほどさらに汗をかくというビール+発汗デトックスで身体をほぐしていた。週末、気が向けば北投や烏来の温泉まで出かけて行って露天の無料温泉につかり、ビールを飲んでいた。これがまた最高で僕は夏の温泉が大好き。

うれしいことにトビリシでもこの温泉ビールができる。トビリシにも温泉があるのだ!地震がめったに起こらないグルジア、火山もない。どうして温泉がわくのかよくわからないが、そもそもトビリシが現在グルジアの首都になったのもここの温泉が理由だという。

僕がグルジア語の教科書で読んだ話はこんな風だった。ここから先は有料部分です

5世紀のこと、当時の東グルジアの王様ゴルガサリは首都ムツヘタから近郊の森へ鷹狩りに出た。あるところで鷹が雉をつかまえてそのまま森に落ちていった。従者が探しに行くとそこには湯けむりを上げる温泉があった。ゴルガサリ王はこの森を気に入って町を建設するよう命令を出した。後には遺言でその町へ遷都するように言ったという。町は温かい湯を産することからグルジア語で「温かい(თბილიトビリ)」を入れて「თბილისი(トビリシ)」と名付けられたんだそうな。

話は戻って先週のこと、僕は今夏初の温泉ビールを満喫してきた。

↑ピンク色で塗りつぶした地区に数軒の温泉屋さんがある。

旧市街の温泉地区付近には地下鉄駅がないのでバスで行くのが一番だけど今回は地下鉄アブラバリ駅から歩いた。15分ほど。写真を撮り忘れたけど途中のメテヒ教会には上述の王、馬上のゴルガサリ像も見ることができる。

↑午後7時近いトビリシ旧市街の一画、温泉地区。丸いドームが温泉の目印だ。右上の教会の上に白い月が出ていたがまだまだ暑い。

温泉地区といっても外観は日本の温泉街とはだいぶ異なる。中東のハマム(蒸し風呂)の方が近い。グルジア語ではこの温泉のことを「აბანო(アバノ)」と呼んでいるが実際に垢すりや掃除、働いているのはアゼリ系やクルド系のムスリムが多く、ハマムと言っても意味が通じる。しかし中東のハマムが人工的な蒸し風呂であるのに対してここが特別なのは温泉を使っている点だろう。この温泉地区まで来ると硫黄臭がただよってくるので、日本人的にはいやがうえにも期待が高まってくる。

ガイドブック的な説明を加えると、この地区の温泉は大きく2タイプに分かれる。1つは公衆浴場タイプ。男女に分かれて客同士が裸のつきあいをする日本の銭湯的なもの。もう1つは個室SPAタイプで1時間いくらで浴室を貸し切る。価格は店によってまちまちで公衆浴場タイプが3~10ラリ、個室SPAは30ラリから100ラリまである。(現在1ラリ=約43円) タオル、石鹸代は別料金なので持っていくといい。

価格差は衛生度やサウナの有無、広さによるのだけど、公衆浴場に時間制限がないのに個室SPAは1時間あたりの料金なので少々割高に感じる。

この日は一番安い3ラリのNo,5アバノという公衆浴場タイプに入った。

↑左の碑にはグルジア語とロシア語で1926年と書いてあるのでそれほど古くない。

中に入ると番台がありお金を払って更衣室へ。更衣室では三助が垢すり、マッサージの営業をしてくるので気になれば試してみるといい。裸になって浴場に入る。イスと湯桶がないことをのぞけば日本と大差ないので困ることもない。シャワーを浴びて身体を洗ってから湯船につかったり、サウナを楽しめばいい。No,5はサウナはあったが水風呂がないのが少々残念。写真は撮らせてもらえなかった。銀製品は変色するので指輪などはとっておこう。

↑こちらは3月に行ったもうちょっとだけ高めの公衆浴場。

↑こちらの方がイスラミックハマムな雰囲気。

お店によっては更衣室に並んで座って飲めるスペースもあったり、個室SPAだとビールや軽食を持ち込むこともできる。また外には温泉上がりの客を見込んだビアパブも多い。よさそうなところをみつけて生ビールと串焼きのツワディなんかをやるのもいい。

前掲の地図で記した温泉地区を越えてさらに奥に進むと、なんと滝がある。温泉と滝、一国の首都の中とは思えないミスマッチが素晴らしい。滝の飛沫が涼しくて湯上りの散歩にもちょうどいい。買ってきたビールを滝で冷やして飲んでもいい。

夏のトビリシ観光のシメは温泉ビールがおすすめ。

↑温泉地区は山ぎわ。トビリシが山にはさまれた盆地であることがよくわかる。

↑ちょっとおしゃれな軽食を出すバーも。

↑温泉地区から10分ほどで滝に。ひんやり涼しい都会の中の渓谷、ビールがうまい!

グルジア酔いどれ夜話
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グルジア/ジョージアで観光ガイドをしています。ワイナリーツアーなどお問い合わせはこちらから

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